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『淡雪』 ふわりふわり…と、冷たく澄んだ青空の中、風に舞う白い花びら。 「あ…風花?」 季節外れの桜吹雪とも見紛う風情に、ふうっと一呼吸置いて寒稽古の手を休める。 ヒナタは、額から噴き出す汗を手の甲で拭い、激しく上下する胸に指を添えて、乱れた息を静かに整えた。 遠く雲に霞む山頂から吹き降ろす風に、里の麓まで運ばれた軽やかな粉雪。 キラキラと熱のない陽光を反射して煌めきながら、地上に落ちるでもなく、ただフワリフワリと空中を漂い風に流れていく。 手のひらを広げて、そっと掴もうとしたけれど、小さな輝きはするりと逃げてしまう。 まるでつかの間の幻を見るかのような冬の景色。 薄っすらと雪が積もり、まるで粉砂糖をまぶしたかのような山の頂きから届けられた冬の贈物。 遠く水色の空と、気まぐれな風に翻弄される淡い雪を、ヒナタはうっとりと眼を細めて見上げた。 「きれい…」 少女の唇からもれた熱い吐息は、白くカタチのない言葉を紡いだ。 (2006.12.12 水乃えんり) アナタの佇む場所が、いつか清らかな白に染まるまで…。 |
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