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『花見酒』


春麗らかな季節。
外に出てまだ少し冷たい風も、太陽の陽射しにあたっているうちに、ポカポカと背を暖めぬるく溶かしていく。
今日のヒアシは、日当たりのいい書斎で、読書をしながらゆったりと寛いでいた。

「だいぶ暖かくなったな…」

一人呟いたヒアシは、パタリ…と、手に持っていた読みかけの本を閉じる。
庭へ目を向けると、ポツリと地面に立つ地味な木肌を露出していた枝先にも、固い蕾が膨らみ始めていた。

「ふむ。もう何日もせず、庭の桜が咲くな…」

まだ小振りだけれど、美しい花を咲かせる桜の木。
数年前に植えたまだ若い桜を、ヒアシは事の他気に入っていた。

「今年も、春の宴はアレの下でするか…」

ヒアシは、柔らかく相好を崩し、週末の予定を書き加えた。


(2007.3.20)




桜咲く季節…甘い酒を満たした杯に花びらを浮かせ、アナタの唇に酔いましょう





すいぞくかん 水乃えんり 筆
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