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日記より抜粋のコネタ




「…今年も、この季節がきたか…」

渋めの茶を飲み干したヒアシは、木の葉新聞を折りたたみながら、ポツリと呟いた。
新聞のある一点に視線を落として、気難しそうに眉間にシワを寄せ、ジッと考え込む。
師走の時期になると、日向宗家の当主たるヒアシの頭を毎年悩ませる出来事があった。

「うむ。今年は…ヒナタとハナビに、何を贈ればいいか…」

そう…ヒアシは、悩んでいた。
可愛い娘二人に(あくまでもその感情を表面には出さないけれど)、クリスマスプレゼントは何を贈ろうかと!
クリスマスシーズンという事もあり、煌びやかな宝石や可愛らしい小物類…そして、高価な毛皮や洋服の類が、世間では重宝されている。
去年は、正月に着る晴れ着を数枚と、ハナビが欲しがっていた修行用の砂袋(サンドバック)…それに、ヒナタには異国から取り寄せた希少な(そして高価な)紅茶を少々だった。
なんといっても、ヒナタの誕生日も近い事だし、もう少し良い物を買い与えてやってもよかったのだろうが、あまり娘を甘やかしていると思われては、宗家の威厳が損なわれてしまう。
その為、ヒアシが表立ってこれらのプレゼントを買いに外出する事はなく、分家の誰かしらに言いつけて、屋敷の必要経費として購入していた。

「アレがいた頃は、まだ楽だったな…」

ふと、ヒアシは、今は亡き妻の姿を懐かしんだ。
ヒナタが幼い頃は、よく気が付く妻があれこれと手を回してくれていたおかげで、ヒアシは、当主の務めにのみ集中していればよかったのだ。
妻を亡くして以来、ヒナタとハナビに贈られるクリスマスプレゼントは、子供向けの玩具などではなくなった。
ヒアシには、娘が何を欲しがっているかをわざわざ聞くのも躊躇われ、新聞などから情報を得て、苦心の末に必要そうな物、若しくは持っていて良さそうな物をプレゼントしていた。
むろん、父親からのクリスマスプレゼントだなどとは、決して口にはせずに。

「…しかし、そろそろ…ううむ。ヒナタには、こういうモノを買ってやらねばならんか…」

ヒアシは、新聞の一点を凝視したまま、どうにも決断が下せずに眉間のシワを深くした。

「だが必要なモノには違いない。…誰に買いにいかせるか…が、問題だ、な」

困惑を隠せない表情を浮かべながら、ヒアシは思案した。
子供だと思っていたヒナタも、もう12歳だった。
日々成長する愛娘の身体に合わせて、キチンとした身なりを整えるのも親の務めだろう。
とはいえ、こういった類のモノは、AとかBとかCとか…Fとか色々と身体のサイズに合わせて購入するべきものらしい。

「こんな時、男親はなんとも居心地が悪いものだな…」

深い溜息を吐きながら、ヒアシは珍しく苦笑を浮かべ、娘たちには滅多に見せる事はない父親の顔していたのだった。




何を買おうとしているかは…秘密です。
つか、そんなのプレゼントすんなよオイ! なモノです(微笑)




2004年12月13日(月)




すいぞくかん 水乃えんり 筆
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