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日記より抜粋のコネタ




新年早々、大雪に見舞われた木ノ葉の里。
下忍総出の雪かきに召集される中、ネジは、一人黙々と日向宗家の敷地内の雪かきに精をだしていた。

「……」

ザッザッ…パサ。
ザッザッ…パサ。
ザッザッ…パサ…そして、エンドレスの効果音。

広い敷地内を白く埋め尽くした雪は、いくらスコップでかいても、一向に片付く気配も無い。
雪かきはかなりの重労働で、低温の外気に晒されながらも、額にはじっとりと汗が滲んでくる。
雪に濡れて冷え切った手を休める事もなく、ネジはひたすら腕を動かし続けた。

「……あ、あの…ネジ兄さん」

暖かそうな外出着に着替えたヒナタが、オズオズと母屋の軒先からネジに声をかけてきた。

「……ヒナタ様。なにか?」

ヒナタに呼ばれ、ネジは雪をかくのをやめて振り返った。

「その…あの…私も、雪かきのお手伝いを…してもいいですか?」

ヒナタは、恐る恐るといった風に、ネジの顔を窺いながら、準備した雪かき用のスコップを誇示するように手に握った。

「…いえ、結構です。これは私が言い付かった仕事ですから」

微かに苦笑を浮かべながらネジは、首を横に振った。

「で、でも! ネジ兄さんだけじゃ、大変でしょう? 私にも出来る事があるなら、手伝わせて欲しいの…」

妙に熱心な表情で、ヒナタは『ネジ兄さんがダメって言っても、絶対に雪かきするもん』と決意をあらわにしている。
ここ最近の事だが、ヒナタは、積極的になったというか、ネジに対してもさほど物怖じしなくなっていた。

「…しょうがないですね。では、こちら側はほとんど終りましたので、集めた雪を日当たりのよい場所に移すのを手伝って下さいますか?」

ようやくネジの許可がでて、ヒナタは嬉しそうに顔を輝かせながら頷く。

「ネジ兄さん。どこに持っていけばいいの?」

ヒナタは、トトトッと、小走りにネジの横に近づいてきた。

「ヒナタ様! 走ると危ないですよ!」

「アッ! きゃあっ」

ネジが注意する側から、ヒナタは凍った雪に足をとられて身体のバランスを崩した。

「危ない!!」

「姉上!!」

ヒナタが転びそうになるのとほぼ同時に、日向の中庭で緊張した声があがった。





「…あ、ありがとう。ネジ兄さん、ハナビ…」

一瞬の出来事だった。
足を滑らせたヒナタが地面にぶつかる前に、素早く走りよったネジがヒナタの腕を掴もうとした。
その、瞬間である。
どこからともなく、妹のハナビが現れ、ネジとヒナタの間に割り込んできた。
そして、まだ七歳児の力とは思えない勢いで、ネジの背中を蹴り降ろしつつ、姉のヒナタの腰に抱きついて支えたのだ。
けれど、所詮は子供の腕力…勢いのついたヒナタの身体を支えきれるはずもなく、先に地べたへうつ伏せで倒れていたネジの背に、そのまま二人して着地してしまったのだった。

「礼はいいので…どいて頂けるとありがたい…」

ヒナタの言葉に、ぼそり…とネジは呟いた。

「きゃあっ! ご、ごめんなさい! ネジ兄さん!!」

顔面は見事に雪にまみれ、ヒナタの尻にひかれた状態のネジに、ヒナタは真っ赤な顔になって謝った。
慌ててネジの背からどこうにも、まだハナビの腕が腰に抱きついているので、身動きがとれない。

「姉上! お怪我はないですか?」

飄々とした顔でヒナタの身を心配するハナビに、ネジは心の中で低く毒づいた。

『この…確信犯め』

ネジの気持ちもどこ吹く風といわんばかりに、シスコン少女ハナビは、今日も元気で害虫駆除に精をだす。





その後、日向宗家の姉妹の手を借りて、雪かきを終えたネジが、母屋で暖かいお茶を淹れて貰ったとかいないとか……。




〜ちなみに、ハナビなしにすると〜




「あ、ありがとうネジ兄さん…」

頬を桃色に染めたヒナタが、ネジの腕の中で恥ずかしそうに呟いた。

「気をつけて下さい…貴女に何かあったら…俺は…」

ネジは、深く安堵の溜息を吐きながら、思わず本心を漏らしてしまう。

「え?」

ヒナタを気遣うようなネジの言葉に、ヒナタは耳を疑った。

『ネジ兄さんが、私のことを心配してくれてる…?』

「ネジ兄さん…」

ネジの名を呼んだヒナタは、カアッと体温が上昇して顔が火照るのを感じた。




2005年01月10日(月)




すいぞくかん 水乃えんり 筆
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