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日記より抜粋のコネタ 2 「手が…どうしたんだコレは!?」 小さな子供の手のひらが、目の前にあった。 ネジが無意識に自分の手を動かすと、目の前の子供の手も、ニギニギと開いたり閉じたりする。 「…まさか、コレが俺の手なのか? この子供の手が?」 呆然と呟くネジの頭上で、不敵な忍び笑いが響く。 「ハナビよりも、背が低くなって…。いくつぐらい若返ったのかしらね?」 ハナビは、コロコロと鈴を転がすような軽やかな笑い声をたてて、楽しげな瞳でネジを見下ろしている。 「ハナビ様…いったい何を…?」 ネジの身体に起きた異変の元凶は、ハナビである事に間違いなかった。 「うん。ちょっと調べたかったのよね…この若返りの秘薬が、どの程度効くのか」 そう云って、空になったガラスの小瓶をネジに見せた。 「若返り? なんでそんなクスリを……」 怪訝な面持ちで呟いたネジは、人体実験の対象にされた事実にようやく気が付き、静かな怒りがこみ上げていた。 「うふふ〜ヒ・ミ・ツ。ネジには、教えてあげな〜い」 上機嫌のハナビは、クルリと背を向け、身体の小さくなったネジを置いていこうとする。 「ま、待って下さい! 俺をこのままにしていくつもりですか!?」 慌ててハナビの前に回りこもうと駆け出したが、身体が小さくなった今、ブカブカのサイズの服が、ネジの足を絡ませてしまった。 「あ!」 叫んだ声は短く、続いてビタン! と派手に前のめりで転んだ音が響いた。 「何…やってるのよ。ネジ……プッ」 呆れたように振り返ったハナビは、無様に床へ顔面をぶつけたネジを見て、笑いながら足を止めた。 「……うっ」 ネジは、しこたまぶつけた顔をムクリと上げ、なんとか身体を起こそうと四苦八苦するものの、大きすぎる服がズルズルと纏わり着いて、満足に身動きがとれない。 「………ううっ。く…」 助けを呼ぶでもなく、真っ赤な顔になって唸っている。 不甲斐ない己の身体を叱咤激励しながら、ネジは必死に立ち上がろうとした。 「……あっ! 姉さまがくる!」 ふいに、ハナビが慌てたように呟く。 勘の鋭いハナビは、真っ先に廊下の先から近づくヒナタの気配に気が付いたのだが、らしくもなく身動きが取れなかった。 まさか自分の策略で小さくなったネジを、ヒナタに見せるわけにはいかなかった。 「く…もう来ちゃう! ネジ、今の自分の姿、ヒナタ姉さまにバレたくないでしょう? 黙ってて」 ハナビは、うつ伏せのままのネジに向かって素早く口止めする。 「なんで…俺が…」 ブツブツと云いたい文句はあったが、たしかにこんな無様な姿をヒナタに見られるくらいならば、黙っていた方がよかった。 「……あれ? ハナビ? どうしたの…」 妹を見つけて、不思議そうに声をかけてきたヒナタは、ハナビの背後で転んでいる男の子に気が付いた。 「どうしたの? 転んでしまったの?」 驚いた様子で目を見開いたヒナタは、慌ててネジに駆け寄って抱き起こした。 「大丈夫? 怪我はしていない?」 心配そうに聞かれ、ネジは下手な返事もできず、ただコクコクと頷いた。 至近距離からヒナタの柔らかい視線で、じいっと見つめられ、どうにも居心地が悪い。 「見かけない子だね? 分家筋の子かな…ねえ、ハナビ?」 「ね、姉さま! うん、そうみたい…えっと、ハナビが面倒を見るように云われてて…」 ヒナタの質問に、ハナビもコクコクと頷く。 「ふぅ〜ん? あっ、オデコに擦り傷が出来てる! ボク、痛くなぁい?」 顔面から勢いよく転んだ時に、床に打ちつけたのだろう。 ネジの額が赤く擦り剥けていた。 恐る恐る手を伸ばすと、呪印を隠していた白布も解けていた。 呪印を見せる事を快く思っていなかったネジは、眉間にシワをよせた。 その不機嫌な顔をどう思ったのか、ヒナタが突然ネジの顔を覗きこんできた。 「やっぱり痛いんだね? 男の子だから我慢していたの? ……エライね」 そう云うと、そっと眼を閉じて、ネジの額にキスをしたのだった。 「ヒッヒナタ様!!!?」 「姉さま!!!!?」 上擦ったネジの声と、仰天したハナビの声が、ほぼ同時に室内で絶叫した。 「痛いの痛いの飛んでいけ〜〜〜って、アレ?」 のんびりとオマジナイの言葉を口ずさみながら、ネジの額から唇を離したヒナタは、キョトンとした表情で、憤激しているハナビを振り返った。 「………(ネジのやつううううう!)」 パクパクと口を開いたり閉じたりを繰り返すハナビを、ヒナタは少々怯え気味に見守った。 「ど…どうしたの? ハナビ…」 ハナビは、一言も発することなく、それでも無言の圧力を持って仁王立ちになっている。 「………(ネジ! あとでみてろよ!)」 ひたすら心の中で罵詈雑言をネジに吐いていた。 2005年01月30日(日) |
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